アメリカン・ヒストリーX (American
History X) [1998.米] ☆☆☆☆
監督:トニー・ケイ
STORY:父親を黒人に殺された憎しみからスキンヘッドの白人至上主義グループの首領となり殺人を犯した青年とその兄を崇拝するように慕う弟。彼らが辿る過酷な現実を真摯な厳しい視点で描いた社会派作品。
CAST:エドワード・ノートン、エドワード・ファーロング
なんといっても兄役エドワード・ノートンと弟役エドワード・ファーロングのWエドワードというキャスティングの勝利。エドワード・ノートンの上手さは今に始まったことじゃないですけどね。(ちなみにショーン・ペンの正当な後継者だと思うんですけどどうでしょう。芝居の度に違う表情を見せるのはもちろんのこと、女の趣味が微妙にトラッシュなとこも含め。)
それはさておき、人種問題という重いテーマを扱うことのリスク(暗くなる・倫理的主張が増える→結果としてつまらない作品となる)を見事に回避しているのは、やはりこの2人の芝居の上手さと存在感だと思われる。
ノートンは独裁者の狂気に満ちたアジテーションと泣きじゃくるイノセンスのアンバランスさを見事に見せる。彼は望んでこうなったのか?・・・違う。彼は現実が許せなかっただけ。受け入れたくなかっただけ。ファーロングはスキンヘッドに咥えタバコのイキがった眼差しがかわいらしくも痛々しい。彼は本当に有色人種が憎かったのか?・・・違う。彼はただ、兄を崇拝していただけ。兄を愛していただけ。(彼の存在がこのテーマをより美しく表現している)
独裁が快楽を持たないというせつなさ。怒りは君を幸福にしたか?という問いの痛み。憎しみの連鎖に震えながら真摯に向かっていく、あまりに弱すぎる2人。・・・重いけれど、しっかりとこちらに投げかけられるテーマ。もうひとひねりは欲しかったけど。
過去をモノクロ・現在をカラーにした王道の演出もよかったようだ。(2001.8)
監督の問題で途中で編集が放り出されたため、この作品は最終的にはノートンによって監督・編集作業が進められたらしい。一説にはノートンの完璧主義と、演出への口出しに嫌気が差した監督のボイコット、との話もあるけど。エゴ強い性格俳優っぽい印象も、映画が本当に好きな生真面目さの印象も受けるエピソードだけど、何にしろ、あんたやっぱりすげえよ、ノートン。(何故かタメ口) 今更言われなくても本人が自身の才能は十分ご存知かと思いますが・・・ (2003.5 追記)
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