カラー・オブ・ハート (Pleasantville) [1998.米] ☆☆☆☆
監督:ゲイリー・ロス
STORY:モノクロのホームドラマ「プレサントヴィル」の大ファンの冴えない青年。一方積極的で遊び好きな双子の妹は兄を小馬鹿にしている。ある日、二人は家電修理のおじさんから受け取った不思議なリモコンを取りあい、誤ってボタンを押してしまう。・・・なんと二人は、テレビの中の白黒の世界に入り込んでしまった!
火事もセックスも「街の外」もない世界で決められたストーリーにそって生活を送る人々。現代とのギャップを感じながらも、その世界を壊さぬよう気をつける兄と、自分のスタイルを崩さず、回りを混乱させる妹。そんな二人に影響され、モノクロの世界は少しずつ色づき始め、彼ら自身も変わり始める・・・
CAST:トビー・マグワイア、リース・ウィーザースプーン、ジョアン・アレン、ウィリアム・H・メイシー
モノクロの画面に、赤く色づく薔薇。最高に美しく、ロマンチックな瞬間!あの一瞬を描けたことだけで、この映画は十分な魅力を湛えている。
モノクロとカラーの融合という現代でしか不可能な映像技術。それを技術先行にするのでなく美しいドラマとして、素敵なアイデアで描いたこの作品。技術はこういう風に使うべきなのだ。ラストにFiona Appleの「Across the Universe」の流れたときのあたたかな幸福感。とても素敵な作品だと思う。
キャストのアンサンブルもいい。オタク気味のお兄ちゃん(ご贔屓トビー・マグワイア。この作品で彼を知って、同時に今にこの人は凄くなる!と確信したのだ。ああ、そして今やスパイダーマン!)が自分の居場所を「古き良き」ドラマの世界で見つけていく姿。流され、現実逃避することで生きてきた彼が、もうひとつの世界に自分たちが起こした波紋を超えて成長していく姿を、ものすごくシンプルに、上手く演じている。骨格に品があるタイプなので、基本的にダサい、マイナーなキャラクターも下品だったり嫌味だったりしないんだよね、彼は。妹役のリース・ウィーザースプーンもそう。口の端にちょっと意地悪そうな笑いを浮かべて「Cool!」と小声で言うところと、本を閉じ、カーディガンを羽織って、窓の側に佇む表情の差。この演技の振り幅が自然で、楽しい。お母さん役ジョアン・アレンが少しずつ感情を表現していく様も素敵だった。
そして、お父さん役のウィリアム・H・メイシーが、失われたアメリカの父の幻影を、あの妙な風貌で演じていたのが切なくて、素晴らしかった。『I'm home!』を繰り返すシーンでは、可笑しさが完全に切なさに変わっていく。「差別」じゃない、「HOME」を思うだけなんだ・・・というアメリカの国家主義とも重なる切なさと悲哀。
ラストの大演説はちょっとやりすぎだが、トビーのキャラクターで上手く乗り切っている。もう少しここを抑え、細かい設定もキチンと符合する話になってれば☆5つになるんだけどな。
とにかく・・・大丈夫、こんな作品が作れる限り、ハリウッドの良心は失われない。そう信じられた自分がいた。 (2000.12)
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