CINEMA REVIEW

CINEMA TOP   HOME

 

『か』行の映画。

■カラー・オブ・ハート   ■キス★キス★バン★バン  ■キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

■ギャング・オブ・ニューヨーク   ■キル・ビル Vol.1    ■クライム&ダイヤモンド

■狂っちゃいないぜ!  ■ゴッド and モンスタ−   ■御法度 GOHATTO

カラー・オブ・ハート (Pleasantville) [1998.米]  ☆☆☆☆

監督:ゲイリー・ロス

STORY:モノクロのホームドラマ「プレサントヴィル」の大ファンの冴えない青年。一方積極的で遊び好きな双子の妹は兄を小馬鹿にしている。ある日、二人は家電修理のおじさんから受け取った不思議なリモコンを取りあい、誤ってボタンを押してしまう。・・・なんと二人は、テレビの中の白黒の世界に入り込んでしまった!
火事もセックスも「街の外」もない世界で決められたストーリーにそって生活を送る人々。現代とのギャップを感じながらも、その世界を壊さぬよう気をつける兄と、自分のスタイルを崩さず、回りを混乱させる妹。そんな二人に影響され、モノクロの世界は少しずつ色づき始め、彼ら自身も変わり始める・・・

CAST:トビー・マグワイア、リース・ウィーザースプーン、ジョアン・アレン、ウィリアム・H・メイシー

モノクロの画面に、赤く色づく薔薇。最高に美しく、ロマンチックな瞬間!あの一瞬を描けたことだけで、この映画は十分な魅力を湛えている。
モノクロとカラーの融合という現代でしか不可能な映像技術。それを技術先行にするのでなく美しいドラマとして、素敵なアイデアで描いたこの作品。技術はこういう風に使うべきなのだ。ラストにFiona Appleの「Across the Universe」の流れたときのあたたかな幸福感。とても素敵な作品だと思う。

キャストのアンサンブルもいい。オタク気味のお兄ちゃん(ご贔屓トビー・マグワイア。この作品で彼を知って、同時に今にこの人は凄くなる!と確信したのだ。ああ、そして今やスパイダーマン!)が自分の居場所を「古き良き」ドラマの世界で見つけていく姿。流され、現実逃避することで生きてきた彼が、もうひとつの世界に自分たちが起こした波紋を超えて成長していく姿を、ものすごくシンプルに、上手く演じている。骨格に品があるタイプなので、基本的にダサい、マイナーなキャラクターも下品だったり嫌味だったりしないんだよね、彼は。妹役のリース・ウィーザースプーンもそう。口の端にちょっと意地悪そうな笑いを浮かべて「Cool!」と小声で言うところと、本を閉じ、カーディガンを羽織って、窓の側に佇む表情の差。この演技の振り幅が自然で、楽しい。お母さん役ジョアン・アレンが少しずつ感情を表現していく様も素敵だった。
そして、お父さん役のウィリアム・H・メイシーが、失われたアメリカの父の幻影を、あの妙な風貌で演じていたのが切なくて、素晴らしかった。『I'm home!』を繰り返すシーンでは、可笑しさが完全に切なさに変わっていく。「差別」じゃない、「HOME」を思うだけなんだ・・・というアメリカの国家主義とも重なる切なさと悲哀。
ラストの大演説はちょっとやりすぎだが、トビーのキャラクターで上手く乗り切っている。もう少しここを抑え、細かい設定もキチンと符合する話になってれば☆5つになるんだけどな。

とにかく・・・大丈夫、こんな作品が作れる限り、ハリウッドの良心は失われない。そう信じられた自分がいた。 (2000.12)

 

キス★キス★バン★バン (Kiss Kiss (Bang Bang)) [2000.英]  ☆☆☆☆☆

監督:スチュワート・サッグ

STORY:かつてはNo.1の殺し屋だったフィリックスは殺し屋稼業25年。もうそろそろ年を感じるけれど、それでも長い春の恋人とはまだ人生を決めかねている。そんな彼、若い弟子ジミーに後を譲って引退しようと決めたのはいいが、末期ガンで老人ホームにいる父親を養うため仕事はしなきゃならない。ということで始めた仕事は何と密輸業者ビッグ・ボブの「33年間子ども部屋から出たことのない息子」ババの面倒を見ること!嫌々ながらもババに「男たるモノ」教育を施すうちに、何故か楽しさを感じ始めるフィリックスだが、その一方、殺し屋組織はフィリックスが抜けることを認めず彼を付け狙っていて・・・

CAST:ステラン・スカルスゲールド、クリス・ペン、ポール・ベタニー、ピーター・ヴォーン、ジャクリーン・マッケンジー、アラン・コーデュナー、マルティン・マカッチョン

思い出して、つい顔がほころんでしまう瞬間、ってのがある。恋の始まり、仕事が予想外に上手くいってしまったとき、懐かしい友人と思わぬ再会が出来た日、何気なく立ち寄った喫茶店のコーヒーが美味しかったとき。そして、こういう映画に出会えたとき。そう、これはそんな幸せな気分になれる映画。

犯罪コメディの枠をひょいと飛び越え、そこにあるのは男同士の熱くて何故か可愛い友情のお話。女性陣も出てくるけれど(とはいえ、この映画は女性の描き方もなかなかナイス。ひとりひとりが逞しく、自分の足で生きていくことを決意しているが、きちんと男を愛せる女性たちだ)、あくまでもそれは「父と子」「男と男」のストーリーの華。でも、それでいい。で、何を隠そう、私、そもそもこのジャンルに弱いんだよね。強い絆があるんだけど、ぶっきらぼうで認めたがらない男の隠しきれない愛情。フィリックスもババもジミーも、ぶきっちょながらきちんとガッツと愛を持ってて、「男子」から「男」に、ラストに向けて少しずつ成長していく。(「大人の男」グッズ・・・銃、ウィスキー、煙草、バリー・ホワイト(笑)で身を包んだベテラン殺し屋フィリックスですら、実は根本的に「モラトリアム男子」だったわけで。)うーん、笑える、笑えるんだけど泣けるなあ・・・ああ、なんて可愛い映画なんだろう!

キャストも見事にぴったり!ファンタジックなお話を嘘っぽくさせない、スレスレのリアルに保てるキャラクターたちの集合体。とにかく主役のステラン・スカルスゲールドがファースト・シークエンスのプールでの追走から古き良き男っぷり全開。不器用そうな全身を動かす動かす。濡れた煙草をフォークで吹かすところも、ウィスキーをがぶ飲みする姿もキマッてる。でも、何だか可笑しい。なんていうのかな、ちょっとくたびれてる感じなのだ。すっとぼけたとーちゃん(イイ味!)とのやりとりも、うーん、ラブリィ。(それにしてもホントよく脱ぎますね、イギリス映画の男って・・・)そこにちょこまかついて回る「子ども部屋から出たことのない33歳」のババ、クリス・ペンがまた可愛いこと可愛いこと!金太郎状態の真っ赤なほっぺ、スカイ・ブルーの瞳に、小さな山のような巨体でキリンのぬいぐるみを抱え、トコトコ歩いている、その姿。最近はやりの「聖なる無知者」なんてのを軽ーく吹き飛ばす、チャーミングな笑顔とトンチンカンな言動(でも必要以上に喋らせないのにも好感)、全身からにじみ出る優しさ。彼のなかでもこれはベストアクトの1本になるのでは。今評判のポール・ベタニーは(意識して見たのは実はこれが初)、いやー、確かにいい男。顔立ちそのものは整ったイギリス顔ってとこなのだが、全身がフレーム・インした瞬間から実に美しい。女殺し屋とのラブシーンで腕を回すところ、頭蓋骨までパーフェクトなシルエット、黒の革コートを翻して走るシーン、いちいち惚れ惚れしました。儲け役とはいえ、これは確かに惚れる人多いのも分かるわ。

インテリアから街の色、音楽にいたるまで、60年代犯罪ムービーのスタイルでこちらをしっかりニヤニヤさせながら、予想と斜めにずれた展開と予定調和を見事に融合させ、見終えた後にはほのぼのとした幸福感たっぷり。人生、外に出てみなきゃ始まらないね。責任も取れなきゃいけないけどさ。でも、生きてくって楽しいものだよ。・・・そんなこの映画に「キス★キス★バン★バン!!」とやられちゃった私なのでした。 (2003.10.12)

 
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(Catch Me If You Can)  [2002.米]  ☆☆☆☆

監督:スティーブン・スピルバーグ

STORY:1963年、16歳のフランク・アバグネイルJr. は父と母が大好き。けれど父の会社の倒産を気に、母は浮気、そして離婚。ショックを受けたフランクは家を飛び出し、航空会社からパイロット情報を入手!小切手も使いこなす詐欺師として、アメリカを飛びまわる!FBI捜査官カールはとんちんかんな部下とともに、パイロット→医者→弁護士と変身していくフランクに父親のような奇妙な愛情を感じながら追いかける・・・。16歳から21歳まで、大活躍(?)した実在の詐欺師の実話を元に、スピルバーグが映画化。ちなみにこの規模の作品ではありえない超短期間で撮影されたそう。

CAST:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス、クリストファー・ウォーケン、エイミー・アダムス、ナタリー・バイ、マーティン・シーン、ジェニファー・ガーナー

何てチャーミングな映画だろう!細部まで「目配せ」の届いた、陽気で魅力的なドラマに嬉しくなる。よかった、これでディカプリオとも、スピルバーグとも和解できた!

まずタイトル・バックが絶品。まるで本物の60年代映画風かのように仕上げたシルエット・アニメーションにジョン・ウィリアムズのスパイ映画風なスコアが重なってくる、あの高揚感といったら!このデザインの凝り方には惚れ惚れ。とにかくセットデザインからお洋服まで、相当こだわってみせてくれる。「天才詐欺師」じゃなくての「フランクくんの行き当たりばったり嘘つき大冒険」といった趣の、楽しい楽しいお話を埋め尽くす、その60年代グッズの愛らしいこと!
キャストもいい。ディカプリオが久々にキュートなんだよなあ。私にとって彼の笑顔は不思議な存在なのだ。何故か普通のシーンにおいてでも、この鼻と口の間ををクシュッと歪めて可笑しくてたまらない、という笑顔をされると泣けてくるのである。(好きじゃない映画だけど「タイタニック」で唯一感動したのは彼の“King of the world!Wow!!”だったんです、あは)何て「男の子」な顔だろう!と。だからこそ最近の彼の低迷振りはホント悲しかった。そしたら、ちゃんとあの「男の子」なレオが戻ってきたのだ!いい加減でチャーミングなフランクのラベル剥がしと小切手偽造シーンで見せるプラモデルを作っているかのように集中しきった顔。パイロットの制服に身を包んだおすましな顔。・・・確かに痩せてはないようだけれど、あの見てる側が切なくなるような表情を見せられたら嬉しいに決まってる。おかえり、レオ。
ブルース・ブラザーズの開祖みたいなトム・ハンクスがまたイイんだな。決して特別好きな役者じゃなかったんだけど、オスカー・ウィナーは伊達じゃないな、やっぱり。ドブネズミ色スーツとサングラスの哀愁、雪だるまのような体型(下半身にかけてのカーブ!)に思わず「あんたはやっぱりアメリカの父だ!」と思わずにいられない。元がコメディの人だから、台詞にリズム感あるんだよね。受けの芝居に徹するのもさすがに上手い。それにしても、どこまでものどかなFBIの描写にはびっくり。
さらに、クリストファー・ウォーケンの使い方には驚かされた。こんな方法があったのね。親父としては微妙なんだけど、男としてはイイ奴。だからこそ、息子に対しても無責任だし、家族に対しても・・・という。情けなくもイトオシイ親父像にクスクス。

惜しむらくはラストにかけて、どうも冗長な印象を残すこと。これだけ楽しい要素があるんだから、そこまで父と子の話にフる必要はないでしょう。家族を欲しがっていることなんてそこまでしつこく描写しなくても。もう少しさらりと描いて欲しかったな。けれど間違いなく、楽しいシーンの数々に映画館を出る足取りが軽くなる、そんな作品だと思う。(2003.7.23)
 
ギャング・オブ・ニューヨーク (GANGS OF NEW YORK)   [2002.米]  ☆☆☆(+☆、ラストシーンに)

監督:マーティン・スコセッシ

STORY:19世紀、ニューヨークのアイルランド移民たちの集団「デッド・ラビッツ」と先住民のグループ「ネイティブズ」は彼らを忌み嫌う。やがて、巨大な権力抗争が始まり、少年アムステルダムは、目の前でデッド・ラビッツのリーダーである父を相手のボス、ビルに殺されてしまう。・・・そして十数年後、ニューヨークに戻ってきたアムステルダムは、ギャング集団の元締めとなっているビルに近づき、復讐を遂げようとするのだが・・・

CAST:レオナルド・ディカプリオ、ダニエル・デイ=ルイス、キャメロン・ディアス、ヘンリー・トーマス、リーアム・ニーソン、ブレンダン・グリーソン、ジョン・C・ライリー、ジム・ブロードベント、ゲイリー・ルイス

いやー、力作でした。。。このレベルの作品はなかなか作れる人いないよな、そりゃ。さすが巨匠スコセッシ先生、お疲れ様でした。長かったけど、なかなかでした。
街が躍動し、とんでもない方向に動きながらも活気を帯びていく瞬間の切り取り方が特に凄い。人が生きる場所である限り、街は生き物。人が街を動かしているようで、実は街が化け物のように得体の知れない巨大エネルギーを持った生命体と化していく。移民の歴史譚でもあれば、ラブストーリーでもあり、親子物語的な要素もあればスペクタクルでもある、このごった煮感あふれるストーリーは、ニューヨークそのものなのかもしれない。ちょっとそのせいで重くなったきらいはあるけど。特に前半、後半の圧倒的なスペクタクルと壮大な「街のドラマ」への序章にしては重く、そこだけでは見栄えが弱い。アムステルダムとビルの関係が構築されていく、という意味は確かに重要だけど、だからこそシンプルにもっと刈り込んで欲しかった。

役者陣ではもう、ダニエル・デイ・ルイスが圧倒的にいい。オーバー・アクトが彼にかかると深みに変わる、その上手さをつくづく思う。すごい負の色気。単純な悪役ではなく、冷酷さと野卑さ、情熱と高貴さが入り混じるビル・ザ・ブッチャー。アムステルダムへの奇妙な愛情と憎しみ、それがニューヨークという街そのものの孕む混沌と歪みを象徴しているよう。アムステルダム役、レオナルド・ディカプリオはまあまあの出来。熱演。しかし、あそこまで太らなくてもいいだろうにね。彼の場合、顔が丸くなってしまうので、どうも凄みではなく坊や然としたところばかり目立ってしまう。ただ、ワンシーン、ものすごく彼らしいきらめきを見せていた。苦しむ友人に「俺を殺してくれ」と言われるシーン、あの表情の歪み方は彼ならでは。はやく、大人の俳優として復帰してくだされ・・・キャメロン・ディアスは美しく逞しい女スリ役を「頑張って」演じてるけどあまりにもガサツな印象。彼女に男たちが惹かれる理由となる「何か」が見えなかったのは残念。つーか、この役自体が微妙だから、ちょっと損したかも。

なんて色々いってますが、このラストシーンだけでも見るべき価値がある。ホントに切なくて素晴らしい。このラストに滲むニューヨークへの思いは、果たして希望なのか、絶望なのか・・・けれど、さらに新しい世紀で、今もニューヨークは動き続けている、それだけは変わらないのだ。 (2003.9.27)
 
キル・ビル Vol.1 (KILL BILL VOL.1) [2002.米]  ☆?◆×▲★(判定不能、でも日本人なら観て楽しい作品だと思います)

監督:クエンティン・タランティーノ

STORY:結婚式の最中に、かつて所属していた毒ヘビ暗殺団の襲撃を受け、夫やお腹の子を殺されたザ・ブライド(本名不詳)。それから4年半。奇跡的に昏睡状態から目覚めた彼女は復讐の鬼と化す。ザ・ブライドは沖縄を訪ね、名刀ハットリ・ハンゾウを譲り受け、暗殺団のメンバー5名を順に血祭りに上げていく。彼女の最終目的、それはキル・ビル…ビルを殺せ!
2部作公開される、世界の映画オタクの星、タランティーノ4作目第一部。B級娯楽映画大好きな彼の愛しいjunksを詰め込んだバイオレンスと高笑いの必見?作。

CAST:ユマ・サーマン、ルーシー・リュー、ヴィヴィカ・A・フォックス、ダリル・ハンナ、デヴィッド・キャラダイン、サニー千葉、ジュリー・ドレフュス、栗山千明、

すげーよ、すげえ。変な映画を観ちまった。判定不可能。ぎゃはははは。という感想としか表現できないものを観てしまった。とにかく、この変さを皆様にも身を持って知って頂きたい。キル・ビル、恐るべし。タランティーノ恐るべし。だからもう、判定の点数が☆では表現できないので、こんなことになってしまいました。
はっきりいって、レザボアとパルプの2本にはあまり興味がなかった私だが、(「ジャッキー・ブラウン」はパム・グリアーのキメっぷりが素敵だったので結構好きです)これは全く今までの作品とは別物の感覚で楽しみました。キャラクターが無駄話をしない代わりに何をするかというと、無駄に血が飛ぶ、手足がぶっ飛ぶ。
結婚式でリンチを受けたザ・ブライドのアップに始まり、キッチンでの乱闘から始まる大暴走。プッシーワゴン、沖縄、日本刀、服部半蔵(つーかソニー千葉ね)、ヤクザ、カトーマスク、女子高生の制服、修羅の花、雪景色、鉄球、オニツカタイガー、トラックスーツ、もはや何が何だか分からないごった煮に詰め込まれた「俺はこれが好きなんだ」全開の愛情あふれるスプラッター。ジャンルとして、これを何に分けるべきなのかなんて、誰もわかんないだろうなあ・・・

ま、要はこれ、タランティーノのおもちゃ箱なんだよね。コドモの頃に夢見た日本の世界を再現している可笑しさったらない。特に後半の予告編で話題となった「ヤッチマイナー」なんて霞んでしまう強烈な片言日本語の連発には唖然、呆然、大爆笑。「キリタイネズミガイルノ」「オクナワ」「イノチアルモノハ・・・」「ウソツケ」「ハットリ・ハンゾウ」ぎゃはははは。笑いが止まらない。そんなわけで、バシバシ日本刀で敵をなぎ倒す、長身スレンダーのユマ・サーマンが格好良くもおかしくてしかたない。いやー、楽しい。タラの日本のイカレたものたちへの愛は相当のもの。アニメーションパートで田島昭宇がキャラクターデザインで参加してることに嬉しい驚きを覚えたし(出来上がったモノは石井克人色が強くなってたけどね)、ルーシー・リューが初めて綺麗に撮られてることにも驚けば(和服似合うね)、GOGO夕張のキャラ造型に「バトル・ロワイアル」の深作が意図してたものをぶっ飛ばしてエモーションをつぎ込んでるその勝手ぶりも可笑しいし、何だかもうここまでやりたい放題やってくれると文句も出やしない。
アクションの見せ方としては、多少不満は残る。青葉屋のシーンのクレイジー88とのバトルはグリーン・デスティニーそっくり(アクション監督のユエン・ウーピンは同作のアクションも担当している)で、もう少し見せ方を変えるべきだったのでは?ラストのユマVSルーシーの雪の中バトルももっと上手くアレンジしてキメて欲しかったな。
相変わらず音楽の使い方は抜群に上手い。最初から戦闘モードに入る瞬間の「アイアンサイドのテーマ」から笑いのツボを押してくる。ラストの恨み節なんて、もう明らかに異常。笑わせようとしてるんでしょ?そーでしょ?とタラ本人に確認したくなる。

つーことで、これはタランティーノの脳内を覗き込んでるようなもの。これはそこにノれるかどうかで決まる作品。賛否両論あって当然。それにしても、こんなに映画館で笑わせてもらったのは久しぶり。なんだかんだ言って、好きです。ははは・・・これは是非Vol.2も観ないとなー。(2003.11.3)

 
クライム&ダイヤモンド (Who is Cletis Tout?) [2000.米]   ☆☆☆☆

監督:クリス・バー・ヴェル

STORY:場末のホテルの一室で、「クレティス・タウト」に間違われたフィンチは殺されかけている。フィンチの頭には殺し屋“毒舌ジム”の銃が突きつけられているのだ。このジム、無類の映画好き。殺しの報酬金が振り込まれる90分の間に古き良き映画のような物語を聞かせれば命を助けると提案してきた。追い詰められたフィンチは自らの体験を語り始める。「とある街」で始まった、スリルと犯罪とロマンティックな物語を・・・

CAST:クリスチャン・スレーター、ティム・アレン、リチャード・ドレイファス、ポーシャ・デ・ロッシ

むむっ、これはなかなかの拾い物。いつ公開されたかも記憶になかったのだが(ホントにいつやってたっけ?)好きだなあ、これ。オープニングのタイトルバックの70年代TVムービー調+ヘンリー・マンシーニ風(“毒舌ジム”の映画館で観てる映画は『ティファニーで朝食を』だもんね)の音楽からニヤリ、とさせてくれる。そう、私の好きな映画の条件はニヤリとさせてくれることなのだ。

出てくるのは古きよき名画の数々。映画好きのツボを心得ている。とにかくセリフの数々にこだわっていて楽しくなる。小道具の使い方も分かってらっしゃる。ううむ、なかなかやるな。詐欺師のフィンチが脱獄して成りすました男【タウト】がギャングに命を狙われていて・・・という設定だけでは、ここまで楽しくはならないだろう。あくまでもそれはベースストーリーで、そこから上手く脱線しながらこちらをクスクス笑わせ、しかも破綻せずにキチンとお話が構築されてるのがいい。“毒舌ジム”の「涙もろく情に厚く饒舌だけど結構冷酷な、飄々とした殺し屋」というキャラクター造型もキュート。(クリスに向かって「その喋り方、ジャック・ニコルソンに似てるな」って言わせるセンスにニヤリ。)こういう役をイキイキやってるティム・アレンって、実に楽しく魅力的だ。
・・・それにしてもお帰り、クリスチャン・スレーター。彼の面白いのは、キレキャラのイメージが強いのに、普通のキャラクターをやっても頭は悪くなさげな顔をしてるとこ。この映画では、彼の抑えた表情を知的で心優しい詐欺師という設定に上手くいかしている。リチャード・ドレイファス、ポーシャ・デ・ロッシも好演。

ついでだから言っておくと、この邦題はちょっといただけないなあ・・・せっかくなら昔風の日本語タイトルにしてくれたらいいのにな。そのほうが“毒舌ジム”も喜ぶと思うんですが。 (2003.6.9)
 
狂っちゃいないぜ!(Pushing Tin.) [1999.米]   ☆☆☆

監督:マイク・ニューウェル

STORY:N.Y.の航空管制塔で、飛行機の離発着をコントロールする航空管制官。地味っちゃ地味だが命を預かる責任は重い。日々神経が磨り減るこの仕事にプライドを持つニックは仲間うちでもトップクラスの管制官。度胸もいい、頭もいい、家には美人の妻。カワイイ子どももいる。・・・と自信を持っていたのだが、新入りのラッセルがクレイジーだけど凄腕だと聞き、彼を異常なほどライバル視してしまう。で、次々と勝負を挑むのだが・・・

CAST:ジョン・キューザック、ケイト・ブランシェット、アンジェリーナ・ジョリー、ビリー・ボブ・ソーントン

一流のキャストと一流の監督がTVムービーを作った、という趣。まあいたって軽い作品なんだけど、お菓子を食べながら寝そべってビデオで観る作品としてなら悪くない。いや、とってもいい。映画館だったら「もっと捻れよ」って思ったかもしれないけどね。
こういう役のジョン・キューザックは本当に素晴らしく楽しい。のほほんとしたお人好し顔に、微妙にダサいファッション(見ようによってはケビン・スペイシーっぽくまで見えるもっさり感)頭は悪くないのだが如何せん小心、自信が崩れるとダメダメになってしまう男。身近にいると「しっかりしてよ!」と背中をバシバシはたきたくなるタイプ。航空管制官という地味でありながら責任は最高に重く、ものすごくストレスたまりそうな仕事にぴったり。何をやってもビリー・ボブに追い抜かれてしまうのでイライライライラしてる顔。で、そのくせに笑ってみせるジョン。自信がなくなるとすぐに引き攣る顔。可笑しいったらない。奥さんを寝取られたかと思って気が気じゃないところなんて(タイトルは「狂っちゃいないぜ!」より「気が気じゃない!」のほうがピッタリかも)気づくとこっちはずっとクスクス笑っちゃってたもの。
ケイト・ブランシェット(あの猫目の強さ。好き好き。)もアンジェリーナ・ジョリー(オバケ唇がやっぱりLOVE。)も、オフな感じでいい。ふたりとも、オンとオフの切り分けが出来てる人なので、味があるんだよね。ビリー・ボブの一見何でもないのにふてぶてしいルックスにもクスクス。うーん、せっかくだから彼のキャラクターにはもっと楽しませて欲しかったけどなあ。

最後に、ビデオ屋さん。この作品をアクションの棚に置くのはやめませう。アクションとか爆発が好きな人に勘違いされて「つまんない」って言われてる可能性高いと思うぞ。アクションになるかな?ってところでラブコメディになる楽しさが、この作品の良さなんですから。 (2003.6.7)
 
ゴッド and モンスタ−(Gods and Monsters)   [1998.英]   ☆☆☆☆(+☆、日本未公開になりかけたと思えない質の高さに)

監督:ビル・コンドン

STORY:30年代に恐怖映画の古典を撮った映画監督ジェームズ・ホエールは、映画界から引退し郊外の自宅でひとり暮らしていた。発作を起こし入院、退院してきたばかり。発作移行、彼の記憶は混乱をきたしていた。記憶がつぎつぎと目の前に蘇るのだ・・・ある日ジェームズは海兵隊あがりの庭師、クレイトン・ブーンに眼を留める。クレイトンもまた彼が有名な「フランケンシュタイン」の監督と知って、興味を抱き、その同性愛と癇癪に苛立ち衝突しながらも、徐々に心を通わせていく。
そして、運命の日。クレイトンを同伴したパーティで思いがけずボリス・カーロフら、彼の「モンスター」たちと再会するはめになったジェームズ。過去の記憶が再び彼を襲う。フランケンシュタイン誕生の夜のような、雷鳴の轟く夜がふけていく・・・。

CAST:イアン・マッケラン、ブレンダン・フレイザー、リン・レッドグレイブ、ロリータ・ダヴィドヴィッチ

なんて哀しく、切ない物語だろう。いや、そんなチープな言葉で片付けたくはない。陰影のみで構成された、ある男の肖像。哀しくも、あたたかな寓話。誰にも理解されない、誰にも愛されない・・・その恐怖と必死に戦う老人の、コミカルなまでの哀愁。無知で無力な青年の自分を受け入れるしかない状況のやるせなさ。イアン・マッケラン、ブレンダン・フレイザー、どちらも決してもともとは私好みの役者ではないのだが、この作品においてはパーフェクトともいえる演技を見せている。

決して必要以上にキャラクターを書き込んでいないのが興味深い。彼らの「日々」を掘り下げることを中心に据え、「人生」や「プライベート」を掘り下げはしない。「全てを明かす!」というケレンや「分かってますよ」という不遜なストーリーテリングがないところにも好感を持った。
少しずつ狂気に取り付かれていくジェームズと、混乱のなかで興味をひかれていくクレイトン。同性愛嗜好を隠そうともせず、憎まれようとしているのか?とも思えるジェームズの態度。その目に映るのは、少年時代の記憶、戦争の記憶、愛の記憶・・・記憶の嵐のなか、自分を貶めてばかりいるその痛ましさ。ジェームズは怖いのだ。どうせ、理解されない。どうせ、もう自分は狂っている。どうせ、死を待つしかない。ハリウッドを放逐されてから、彼の行き場のないプライドが精神を追い詰め、肉体の衰えが拍車をかける。焦り、混乱する中で「モンスター」の出現を祈るようになるジェームズ。イアン・マッケランが、凄まじい熱演を見せる。その大芝居を向こうに回して、若さと無力さと力強い肉体を持て余すクレイトンをブレンダン・フレイザーが大好演していて驚く。カエル男だの脱ぎ専だの、我が家では好き勝手ヒドイこと言われてた人ですが、完全に見直した。野太い声とネイビーカット、ゲイ・ヌードのモデルのような体を活かしきった。お見事。

「老い」というテーマは難しい。「同性愛」というテーマも。「映画界の闇」「心の傷」どちらを扱うのも、とてつもなく難しい。「名作」を狙ってこういったテーマに簡単に挑戦してしまうことで、なんと駄作が増えていくことか。
しかしこの作品の作り手は、あくまでもそのテーマだけを描いていくのでなく、ジェームズ・ホエールの「生」を描くなかでじっくりとを浮かび上がらせていく。そこには「全て理解していますよ」的ないやらしさは全くなく、「あなたのことは分からない、けれどそういう生き方だってある」という作り手たち(監督だけの手腕ではあきらかにない。もちろん監督もそうだが、スタッフ・キャスト全員が、ジェームズに正しい敬愛を抱いている)の姿勢だけがある。それが作品全体を包み込む品格になっているのだろう。 (2003.7.6)
 

御法度  GOHATTO  [1999.日本]  ☆☆☆☆(+☆、これは完全に個人的な好み)

監督:大島渚

STORY:幕末の京都。血気盛んな男たちの集団―新選組―にひとりの美少年が入隊する。奇妙な彼の存在をめぐって、男たちの中にも微妙な違和感がひたひたと忍び寄ってくる。憶測、嫉妬、衆道、血、裏切り・・・。「局中法度」「軍中法度」という厳しい戒律の下、抗争と殺戮に明け暮れていた新選組が、狂気を帯びた静かな騒乱に陥っていく・・・ 

CAST:ビートたけし、松田龍平、武田真治、浅野忠信、的場浩司、トミーズ雅、伊武雅刀、神田うの、吉行和子、田口トモロヲ、桂ざこば、崔洋一、坂上二郎 

個人的には大好き。傑作だと思うんだけどなあ。なんだけど、意見は相当分かれる作品。ま、それは分からなくもない。これ、結局こういう世界観を受け入れられるかどうかだろうし。でもこれを「スター隠し芸大会」だの「ただのやおいだ」「歴史的検証が弱すぎる」という人は・・・うーん、監督のトラップに引っかかってないかい?だってこの作品、愛にも男色にも、そもそも新撰組っていうテーマそのものにさえも興味ないように見えた。少なくとも私には。
じゃ、かわりに何があったのか?そこにあるのは、ただただ「得体の知れないもの」に集団が浸食されていく、その不気味さとエロティシズム。うん、やっぱり男色のドラマというよりはやはり人の心の不可解のドラマと見たほうがしっくりくるような気がする。
だからこそ松田龍平がよかったわけだ。加納惣三郎は普通の美少年ではダメだった、と思う。唇の赤さや頬のふくらみ、決して美形ではないのだが少年らしい柔らかなオーラを放ちつつも異様に冷たい三白眼を持つ彼だから、低温動物のような得体のしれない不気味さと純粋な凶暴性を孕んだ笑顔を見せられたわけで。デビュー作ということで台詞はまだまだ生硬なところが目立つ(正直棒読みに近いところもある。最近は台詞は随分うまくなったが、そもそもどんな役でもできるような器用なタイプじゃない)んだが。
もちろんいいのは彼だけじゃない。この不気味な心理ドラマの面白さを支えるのはやっぱり脇の見事なキャスティングだ。武田真治(「清廉」という言葉を連想させる、意外なまでの気品!川辺のシーンの清潔感ただよう色気にびっくり。)と崔洋一(堂々としているのに何故か「ぬらりひょん」とした存在感!監督としても上手い人けど役者でもいけるのでは?)の好演はなかでも特筆もの。もちろん、重要な役まわりの田口トモロヲと浅野忠信は安心して見られる演技派でありつつもかすかに「ねじれ」を体に込めてて、その違和感がいい。トミーズ雅と坂上次郎がおおらかな笑いをちりばめてくれるのも、予想以上の面白さだった。(神田うのが浮きまくってたが、喋らせなかったから許す。って何者だ私。)

それにしてもラストのビートたけし(もはや貫禄たっぷり、それでも重くならない芝居がいい。本人はあまりこの作品好きじゃないみたいだけど)の台詞が印象に残る。考えさせられる、というのかな。誰もが心の中に住まわせている魔。法度では縛ることができない、人間の心の闇。うーん、たまんない。怖い。ゾクゾクくる面白さだ。(2000.11)

改めて見て、やっぱり面白かった。最初に見たときの印象は殺伐とした気配と冴え冴えとした澄み渡った空虚な感じ、だったけれど、意外にもひんやりとした質感の中にあるユーモアにニヤリとさせられた。松田龍平はやっぱりよかった。「さあ・・・」「でもありませんけど・・・」という短い言葉のなかに手練手管知り尽くした遊女のような色気を漂わせてて、面白い。美形じゃないんだけど今これだけ妖気ある男の子いないんじゃないだろうか。
ちょっとやりすぎなくらい、硬質でブルー基調のスタイリッシュな映像も、古めかしいモダン趣味な坂本龍一の音楽もよく批判の対象になってるけど、この曲者役者集団を抑えるにはちょうどよかったと思う。ちょっと褒めすぎか。でももう、これは完全に個人的趣味でハマったんで、甘くなっても許してください。5つ星。(2003.9 追記)

 

このページのトップへ

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送