CINEMA REVIEW
『さ』行の映画。
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千年女優
[2001.日本] ☆☆☆ 監督:今敏 STORY:かつて一世を風靡した伝説の女優「藤原千代子」。彼女の大ファンである映像監督の男と助手は、年老いた彼女の家を訪れてインタビューを始める。映画界に入ったきっかけ、恋、戦争、撮影秘話、思い出・・・ところがいつのまにか彼女が出演した映画のエピソードと彼女の経験が話のなかでクロスしはじめ、インタビュアー二人を巻き込んでの波瀾万丈の映像絵巻が展開されていく。 彼女の思いはただひとつ。「あの人に、会いたい・・・」 奇妙な魅力がある作品、それが今敏が監督した「千年女優」。フルアニメーション。本来アニメ嫌いな私がこの作品を見ちゃったのは、今敏の初監督作である前作の「PERFECT BLUE」が好きだったから。ほの暗い悪意のなかで、売れないアイドル女優を主軸に、彼女の神経の摩耗を見せながらアニメーションならではの「実写ではできないこと」をしれっとやってのけるサイコ・サスペンス(しかもR指定)。その独特の質感が実写映画とアニメすれすれの妙な面白さを醸し出していて気に入ったのだ。 で、今回の「千年女優」。さらにステップアップして、「映画してる」ので驚いた。どこまでが本当か分からない、という物語の中で、するりと自然に映画の中の小宇宙が展開されていく。現実と非現実の境の歴史絵巻。動きの付け方があえて「アニメ的」にしてある部分が特に美しく、人力車→坂を下る自転車、という一連の動きの躍動感と色の鮮やかさにはやられた!しかも音楽はP-MODEL平沢進によるテクノ!(余談だが、最近「おかあさんといっしょ」で平沢進の「地球ネコ」ってシュールすぎる曲が歌われててびっくりした・・・もしや隠れブーム?)あえて、リアルに描かないことで浮かび上がる「映画」という世界のリアル。これはなかなか見ものだ。 声優では山寺“七色の声を持つ男”宏一がさすがの上手さ。深く優しい暗い声が「鍵の君」を印象付ける。しかし、大きな問題点、主人公千代子の少女時代の造型と声がなー。いかにもアニメなのよ。あの出だしの違和感がなければなあ。もう一段階リアルを最初から掘り下げて欲しかった・・・。 それにしても、この監督の作品って「いかにもアニメ」な設定でありながら、キレイキレイな嘘で固まっていないのがいい。妙に汚れ感があって、生生しさがある。この主人公たちに対しては「●●萌え」なんてことを言わせる余地がないのだ。だって、人間っぽすぎるのだもの。そもそも「大人の女」が主軸に置かれるという時点で絶対的にマイノリティのアニメだしね。そういう面で、これは私の苦手な「こども」を美化する作品(あえて作品群を出すまでもないですね)、もしくは「こども」を思想家にでっち上げる大人向けアニメ(これも作品名はいらないですね)の逆位置のアニメ。映画好きの本来の意味での「オトナ」の鑑賞に堪えうる「映画」になっていると思う。(2003.9.25) 追記:http://www.asahi-net.or.jp/~xw7s-kn/で、監督の手作りHPが観られます。実は全く恵まれてない状態でこれだけの作品をつくったってこと自体、十分凄いかもしれない・・・。なんて書いてたらタイムリーに千年女優がオスカー・アニメ部門にノミネート?という噂や同監督の次の作品「東京ゴッドファーザーズ」の全米公開ニュース。現在、俄然注目され始めた。これは率直な感想として、大変うれしい。地味な一作目から注目して見ていた監督が活躍し始めるなんて、そんなにないですからね。引き続き観ていきたいです。(2003.11) |
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